集団って少し怖いと思う。自分たちと違う人間がいるという事実を初めから消してしまっているのだ。
(『放課後の音符』山田詠美p131)
「民意だろ。」
「みんなが言ってるんだから、民意でいいだろ。」
「俺をディスらないでくれよ。」
¯\_(⊙_ʖ⊙)_/¯
今日、会社から疲れて帰るなり、夫は言った。
ネットのバズと民意は同義だという。
民意が反映されるという事実に対して、子供だとか選挙権だとか有権者だとか外国人だとかは関係ないのだと言う。
「集団のクレームにより、動くべき人が動いて社会を動かすこと。」
これが、民意だという。
「みんなが(不満を)言って(社会が動いて)るんだから。」
民意だと言う。
会社から疲れて帰ってきたわたしとジェシーは、いつものように報道番組を見た。
無言で時だけが流れていた。
働いてないやつに言われたくない。
ネットショッピングにハマったやつに言われたくない。
エラストクロスを買い占めたやつに言われたくない。
クレジットカードの明細を隠しているやつに言われたくない。
わたしとジェシーは、静かにテレビを見ていた。
夫は冷蔵庫を開けたり締めたり、台所をウロウロしながら、言った。
「俺、あした出社だから。」
「バグが出たから直せって言われたから。」
わたしとジェシーは、聞こえないふりをした。
夫がもう3ヶ月近くも時短勤務と自宅待機とテレワークで時間を空費している間に、わたしは週に6日も出社して、2次元と3次元のDesignをマスターしたのだ。
「俺、あしたから出社だから。」
「バグが出たんだって。」
何人そう言ってんねん
「みんな」か?
みんなって何人や。
民意か?
そうか
民意が反映されたんやな。
そんなにようけバグ出してクビにされんようにな。