『人生はやり直しがきかないと思っている人のほうが、瞬間瞬間を大切に生きることができるような気がする』
と志津子は思う。
『お金や健康など、不安はある。不安だらけと言ってもいい。
だが、人生でもっとも恐ろしいのは、後悔とともに生きることだ。孤独ではない。』
「結婚相談所」 村上龍
お前はまだ間に合うから何かを探せ、と兄はぼくに言った。オヤジやオフクロや教師の言うことを信じたらダメだ。あいつらは何も知らない。ずっと家の中とデパートの中と学校の中にいるので、その他の世界で起こっていることを何も知らない。ああいう連中の言うことを黙って聞いていたらおれみたいな人間になってしまう。おれはもう何もする力も残っていないんだ。まだ二十歳なのに何かを探そうという気力が尽きた。でもちょっと遅すぎたがまだ気づいただけましだと思うよ。これでテニスとかスキーの同好会に入ったりして適当に大学を出て、オヤジみたいにデパートとかスーパーに就職したら本当に終わりだった。オウムに入った連中がおれはよくわかるんだ。気力がゼロになると何か支えてくれるものが欲しくなる。何だっていいよ。やっとわかったんだけど、本当の支えになるものは自分自身の考え方しかない。いろんなところに行ったり、いろんな本を読んだり、音楽を聴いたりしないと自分自身の考え方は手に入らない。そういうことをおれは何もやってこなかったし、今から始めようとしてももう遅いんだ。 自分で決めつけるのも変だが、よく戦争映画なんかで自分が死ぬことがわかるやつが出てくるだろう。からだ中から力が抜けて、寒くてたまらなくて、深い穴に吸い込まれるような感じがして、自分がもうすぐ死ぬことがわかるんだけど、あれと同じだよ。
「コンビニにて」 村上龍 「空港にて」 2005 文春文庫 pp22-23
今日は重大発表をするはずだったんだけれど、理事長の都合で中止。
先週末の練習会でトップスピンのヌマタ選手が近所の草トー、ダブルス大会に出ると聞いて、かっつんに誘われて応援に、観に行った。
朝バタバタしてたのもあるけど、かっつんが差し入れ買おうよ、と言って、セブンイレブンに寄った。
しかも長居した。
まだ予選だろうなと言いつつ、おれも出たかったんだよ、なんていう話をしていた。
ボルグ&マッケンローダブルスは企画倒れしたが、かっつんがへんなことを言い出したのがきっかけだ。
「おれとヌマタクンが組むのは違うでしょ? 上手いヤツと組んで勝とうとしてるイタいオヤジになるだろ? 」
そんなことないと思うけど、2年前にイケノヤでショータくんが実家に帰っていたことがきっかけで、理事長がペアを引き裂いたからだ。
ダブルスの大会は毎週やってるのに、一度もペアを見れなくて、わたしは、後悔している。
もっと後悔していることがある。
1ヶ月ぐらいテニスをお休みしていた時期に、久しぶりにヌマタクンに会ったとき、えつこさん、えつこさん、えつこさん、って。「賞金付きで優勝しました! 」「えつこさん、引っ越したん? ぼくも、引っ越しました! 」とか言って、練習のあとも、話したいことがたくさんある、っていう感じだったのに、時間がなかった。
久しぶりのダブルスで太郎とバタバタしてて、翌月にあるシクラメン男子ダブルスの打ち合わせか何か、ベイビーステップ全巻を太郎に貸すことになってて、さらに、トップスピンに加入したてのジャック先輩が、、、
こんなんですもん。
もっとたくさん、話ききたかったな。
それから、沼田岡田ペアのダブルスを見に行けなくて、後悔している。
健闘してましたよ、と聞いて、うれしかった。
ネットプレーは必須ですね。
という話だったけど、社会人のテニスは義務じゃない。
真剣にやるのは良いことですが、社会人のテニスは人生を豊かにする趣味です。
本人が本当に強くなりたかったら、自分で研究するだろう。
好きにやらせておけ
と
理事長は、思っている。
悩んだら基礎練。
無心。
一度も沼田岡田の勇姿を見に行けなかった。
なにしろ入院したり、いろいろほんとに大変で4ヶ月もテニスを休んでいたのだ。
4ヶ月って、1年の3分の1だ。
タウンテニスもおかちゃんから何度も誘われてたのに、一度も行けなかった。
一緒に練習してるから、ペアになったり、試合が交流会みたいな感じで、楽しみにしていた。
一度も見に行けなくて、後悔している。
それから、オタクとオタクの会話に割り込んだことも後悔している。
フェローズ行くんです、って言ってたのとかも覚えてるし、
テニス仲間ができて、練習にも試合にも誘ってもらえる、って聞いた。
つっちーに以前、カンタンなコートの取り方を教えたのだけれど、確実に利用しているようで、土橋さんがコート取ってくれる火があって、誘ってもらえる、と聞いて、もう、いろんなこと思い出して泣きそうになったね。
あいつはテニスうまいけど変わってるから、練習や試合に誘ってくれるような友だちできないんじゃないかと勝手に思っていた。
つっちーのおかげ。
あとは、KYおかちゃんのおかげ。
タイプは全然違うが、ダブルスに誘ってもらえたり、人の輪に加われて良かったなと思う。
岡田沼田は、話は合わないけど志向が合うか何かで、カウンターを決めまくっていると聞いて、いい大人がやることじゃないよなと思いながらも、見れなかったのは残念だ。
おかちゃんは、ヌマタクンの実力に乗っかってズルしてごまかしてまで勝ってるだけ、と言うけど、そんなことないと思う。
おかちゃんも寂しがりやだし、ブランク明けでなかなか自分と向き合えないから、ヌマタクンに組んでもらって試合勘も感じることができるし、ヌマタクンのほうもダブルス好き勝手にできるし、ひとつの未熟なカタチだと思う。
わたしはわかってないからこんなこと言うんですけどね。
ごまかし、きかないと思うよ。
2人の実力だと思ってるよ。
このまえ練習会に駆けつけたヌマタクンは実は、4月の異動で帰阪することになった。
2年間の本社留学みたいな感じで。
来月から4年目だ。
えつこさんえつこさんと言ってた頃が懐かしい。
おかちゃんもさいきん理事長ばなれして、もう黙々と練習してるし、成長を感じる。
ネットプレーもサービスダッシュも、練習中でふだんからバックボレーや逆サイドも。
そういう型がとか陣形がっていうことより、ヌマタクンのテニスはショットが上達していた。
ところが今日、ヌマタクンは負けてしまった。
会場についたとき、時間も早いし予選っぽかったので、やってるやってると思いながら見て、サンドイッチを食べながら、アップの様子を見ていた。
負けそうもない相手に負けた。
信じられない。
「優勝しますね。」
その予定だったはずで、
「優勝まであと3回」
っていうところからビデオ撮影する予定だった。
負けてしまって、何を話していいかわからず、時間も早かったから、最後の晩餐? テニスに行ったようだった。
負けて、かわいそうだったな。
わたしにはダブルスはわからないから、何も言える資格はない。
ないんだけど、やっぱりハードコートで練習するべきだよ。
あんなに球遅いのに負けるっておかしい。
ハードコートよりは絶対に遅いじゃんか。
負けた相手のペアも、このあとの試合で2∼6ぐらいで即効、負けていた。ベスト8になったから埼玉県大会の予選には出れるけど、「申し込みのやり方がわからないから、いいです。」とか言っていた。スクール生? 高校生ぐらいの未成年ふうの。
たまたま目の前で試合してたペアのポーチが上手くて、
つい、
「ナイスショット!」
赤いウェアの人が、振り向いて、
やべ、キレられる😅
と思ったら違うくて、
「ありがとうございます!! 」
と✨
大きな声で礼を言われて、お辞儀までされた。
急に相手のベテランペア(都内某区で本戦の常連)も本気出し始めたかで展開が変わって、良い試合をやり始めた。
成り行きで、応援した。
試合には勝って、
「応援ありがとうございます。力になりました。」
と言った。
かっつんが、「差し入れ、むだになったね。」と言った。
わたしは、「今の人たちにあげない? 上手かったし。」と言った。
かっつんが、「あんなん、たいして上手くないよ。ポーチは上手いけど、おれと太郎のペアでコテンパンにできるレベルだ。」と言った。
なんか、いろんなこと思い出して、泣きそうになった。
ダブルスはペアがあってのことだから、温度差があると結果が出ないんじゃないかなと思う。
自分の試合でもなんでもないんだけど、わたしとかっつんは、軽く落ち込んでしまった。
かっつんはときどき、感情移入しすぎるときがあって、かわいそうだね、かわいそうだね、とか、言ってることがあるんだけど、今日は別にそうでもなかった。
あと2週間ぐらいしかないから、テニスしてる時間ないだろうけど、全てを踏み台にして、帰阪してからも頑張って欲しいね。
1ヶ月ぐらいは思い出して悔しがるレベルの試合だったからね。
メンバーが負けると癒される理事長が、負けた姿を見て落ち込んだのは、つっちーのシングルス以来だ。
あとで聞いたら、今日は優勝したかった、優勝狙ってた、とのこと。
試合をろくに見てなかったのが不幸中の幸いだ。
練習のときに着ていた見覚えのあるシャツが懐かしかった。
この春は知り合いが5人ぐらい転勤する。
自分自身が、技術チームに戻ることになった。
製造拠点が中国だから売るものがない。
それが理由じゃないけど、次の上司が理事長ファンみたいなタイプなんだよ。社長もそんな感じ。
降って湧いたような話で、驚いたがラッキーだ。新しい技術をイチから勉強してメーカーの研修を受けて大学にも行ってほしいと打診された。
人間不信ぎみだから、ちょうどよかった。
特許をやっていたせいでふつうの会社員じゃないから、自分はこれでいいんだと思う。
理事長も並行して続けていこうと思う。
「3年なんて、そんなんやってるうちに入らん。」
テニス人生は長い。
寮に帰りたくなくてか、転勤してきたばかりでテニスを語れる仲間もいないなか、トップスピンに入り浸りで週3ぐらい練習してた頃が懐かしい。
もうずいぶん前になるけど、春から夏の短い間に、思い出ができました。
思い出すのはテニス以外のことばかり。
シングルスの夜練でアンダースピンかけてシングルスの下手な理事長をバカにしたり、出禁にするわと落ち込んだ日もあったけど、今となれば懐かしい思い出だ。
卓球大会もついに実現せず。
ヌマタクン、ありがとう。
元気で。
ディアドラカップとシクラメンだけ来ればいいじゃん。
再登場、楽しみにしていよう。